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【春に】

Takamasa

今日は、木下牧子×谷川俊太郎 の名曲【春に】です。長く歌われている曲なので、そのルーツを探ってみると、初版は1989年。『教育音楽』という雑誌で発表された「混声三部」版なのだそうです。その後、1992年に『混声合唱曲集 地平線の彼方へ』ということで出版されました。

木下牧子さんといえば『方舟』とか『ティオの夜の旅』とか、何しろ大作の合唱組曲のイメージもありますが、この【春に】は、初めて単品で発表された曲なのだとか。

で、混声版の曲集出版から数年後、各所からの要請をうけて女声版のアレンジが出版されました。

混声版の初演は、法政大学アカデミー合唱団(指揮:関谷晋先生、ピアノ:久邇之宜先生)
女声版の初演は、東京放送児童合唱団(指揮:古橋富士雄先生、ピアノ:近藤晃司先生)

ということで、やはり若い人によく響く曲なのだと思います。
また、混声三部版は、中学校の合唱でも取り上げられていることがありますね。

混声版も女声版も、どちらも変ロ長調。とてもさわやかな、春風を感じるような前奏から始まります。

対して、谷川俊太郎さんの詩は、子どもから大人に向かって歩んでいく期待と不安、葛藤など、若い世代の様々な感情の揺れ動きが語られています。やさしいことばで、決して難しい表現ではないのですが、時には熱く、時には厳しく、生々しいまでに青春時代の心の波がつづられていますね。

大人になって改めて詩を読んでみると、気恥ずかしいようなむずがゆい気持ちにもなりますが、不思議と、当時よりもスッと読み込めるような気もするのですが、皆さんはいかがでしょう?

曲の場面転換を、どう歌うか?

さて、この曲。さわやかな優しい曲のように聞こえてきますが、いやはや、なかなかに歌いごたえのある曲です。詩の様々な色合いに寄り添うように、ピアノパートも表情を変えていきます。

ピアニストは、是非、そうした場面の移り変わりをよく感じて、単に合唱を支える伴奏というだけではなく、合唱と協奏するもうひとつのパートとして演じていただけたらと思います。

もちろん、合唱団はただ自分の音や言葉をいっしょうけんめい歌うだけではなく、他のパートはもちろんのこと、ピアノとの関係性についても、よーく聞いて、感じで歌ってもらえると嬉しいです。

特に、混声版なんてことになると、男子と女子の連携、ということも超重要になってきます。

女声と男声が、一緒になるところ、分かれる所、そしてまた再び一緒になるところ・・・

あるいは、掛け合いの中で補い合ってひとつのフレーズ(言葉や文)を作っていくところ・・・

そんな、パート同士のつながりと、ピアノとのつながりを、ぜひ楽しんで歌ってみてください。

速度変化の捉え方

♩=72から始まりますが、例えば初めの「このきもちは」のトコロ。
フェルマータのあと、指揮者としても、どう入ろうかとても悩ましいところかもしれません。

で、こういう場所は、基本的には歌い手次第、だったりするのが実際のところ。
ただ、「不安で、待って消極的になる」というのが、一番残念なのです。

・少したっぷりめに「この」を歌い、「きもちは」から a tempo 的に進み始める

・「この」から、元のテンポですっきりと進み始める

のどちらかかと思います。

ここで、4拍目の裏でしっかり入るために、思い切り指揮を振ってしまうと、それはそれでうまく行かない悪循環に陥りますし、ちょっと曲調とも合いませんよね。

「きもちは」からは、ピアノがしっかり刻んで進んでくれるので、そこに乗っからせていただいて、「この」の歌いだしを、合唱団の中できちんとコンセンサスをとっておくと良いと思います。で、歌い出しは、棒ではなく「息遣い」で共有する。

えー、そんな曖昧な事!

と思うかもしれませんが、こういう場所は、振らない方が良い、とすら思っていたりします。
もちろん、ノーアクションという事ではないのですが、大胆なバトンテクニックよりも、さあ、歌い始めよう!という気持ちを共有し、ポンと後押しする程度で十分なのではないかと思います。何度か練習して、お互いの息遣いやスピード感を共有してみましょう。

で、スピード変化があるところは
・「えだのさきの」の前のrit.

・「いかりがかくれている」の accel.、「こころのダムに」から♩=80

・Tempo Ⅰの前のrit.とフェルマータ、Tempo Ⅰの♩=72

などがあります。

これらは、曲の場面が大きく転換する場所。

例えば、速度指定されているところがありますが、スピードをメトロノームに合わせて正確に刻むというよりは、「72」と「80」のニュアンスの違いを、どうとらえるのか考えてほしいと思う次第です。

72って、どんなテンポなんだろう?

そこから、80になるって??

速度のへんかからしたら、ものすごく激しい変化とはいわないかもしれません。が、この場面の転換を、どう感じて、どう表現するのかということは、ぜひ語り合ってほしいところです。

つまり、設計図通りに組み立てることも、まずは必要なのですが、そこから、何を感じ取るのか?谷川俊太郎さんの詩を、木下牧子はどう感じてこの形にしたのか?それを受けて、私はどう感じたのか?

詩×曲×演奏者 の想いや経験をおりまぜながら、表現の根拠をさぐるということが、とても大切で、とても楽しいプロセスになるのではないかと思います。

合唱というのは、練習する過程でこういう語りが重ねられるというのが、楽しいところでもありますね。で、そうして表現に自信をもって臨む合唱は、やっぱり音も変わってくるものです。

じっくり、練り上げながら、自分たちにとって納得のいく表現をさがしてみてください。

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